ダクトレス第一種換気は換気できない?実際の住宅で測定!
高気密・高断熱住宅を検討する際、多くの施主が直面するのが換気システムの選択肢です。
特にダクト(配管)を使用しないダクトレス第一種換気は、その設置の手軽さやメンテナンス性の高さから注目を集める一方で、本当に家全体の空気が循環するのかという疑問の声も少なくありません。今回は、目に見えない空気の動きを実際の住宅で測定したデータをもとに、その真の実力を明らかにします。
「ダクトレス第一種換気は換気できない」は本当?噂の真相に迫る
インターネット上の口コミや動画などでは、ダクトレス第一種換気に対して「部屋の空気がよどむ」「換気不足でおすすめしない」といったネガティブな意見が見られます。こうした懐疑的な声が広まる最大の理由は、ダクトレスならではの独特な換気方法にあります。
ダクトレス式は、壁に取り付けた個別の換気ユニットが約50〜70秒ごとに給気と排気を交互に切り替えることで熱交換を行います。
この仕組みを見た人が、汚れた空気を放出した直後に同じ場所から新鮮な空気を吸い込む様子を想像し、結局は壁の周囲だけで空気が往復しているショートサーキット状態になっているのではないかと疑念を抱くのは無理もありません。
また、家自体の隙間が多い低気密な住宅に導入してしまうと、給排気のバランスが崩れ、計画通りに空気の循環が行われなくなる可能性があります。
こうした条件も、ダクトレス第一種換気に対する懐疑的な見方につながる要因の一つです。
測定の概要:どんな家でどうやって測った?
今回の測定は、延床面積が89.42㎡の、高気密・高断熱仕様で建てられた2階建ての戸建て注文住宅で行いました。
この住宅は、建物の隙間の多さを示すC値(隙間相当面積)が0.5という優れた気密性を備えています。
測定にはCO2濃度センサーを使用しました。
家族4人が日常の生活を営み、就寝する時間帯を含む24時間にわたって、LDK、2Fホール、2Fスペース1~3の5箇所で11日間に渡って連続してデータを取得しました。
試験期間:令和4 年8 月19 日~令和4 年8 月29 日
試験者:日本スティーベル自社試験
測定方法:CO2濃度測定器を計5カ所に設置
設定風量:Ⅲ
設定:熱交換モード
家族構成:4人家族
地域:大阪府岸和田市
延べ床面積:89.42㎡
C値:0.5㎠/㎡
竣工:2022年5月
間取:3LDK(吹き抜け有)
測定①:CO2濃度はしっかり下がる?換気量をチェック
人間が快適に、かつ健康的に過ごすための空気質の目安として、
室内のCO₂(二酸化炭素)濃度は1000PPM以下に保つことが推奨されています。
測定の結果、LDK、2Fホール、2Fスペース1~3の5箇所では、CO₂濃度がほぼ同様に推移し、日中の活動時間帯においても概ね700~900ppmの範囲で推移。
測定期間を通して、一時的な上昇を除けば1,000ppm以下が維持されていることが確認できました。
ここで注目したいのが、「どの場所を測っても、CO₂濃度に大きな差が見られなかった」という点です。
もし、ダクトレス第一種換気によって「換気ユニットの周辺だけが換気され、離れた場所では空気がよどむ」のであれば、測定場所によってCO₂濃度に大きな差が生じることも考えられます。
しかし今回の測定では、LDKだけでなく、2Fホールや2Fの各スペースにおいても、CO₂濃度はほぼ同じような変化を示しました。
つまり、今回測定した住宅では、特定の場所だけCO₂濃度が高くなるような大きな偏りは確認されませんでした。
もちろん、グラフには一時的に1,000ppmを超える箇所もあります。例えば、子どものいたずらによる息の吹きかけや、複数人の来客など、通常よりもCO₂の発生量が増えたタイミングでは、一時的に濃度が上昇しています。
しかし、こうした上昇は継続するものではなく、その後は再び低下しています。
これは、人が生活することでCO₂濃度が変動する住宅環境においても、換気によってCO₂が排出されていることを示す結果です。
今回の実測では、ダクトレス第一種換気システムを稼働させた住宅において、5箇所の測定ポイントでCO₂濃度に大きなばらつきがなく、日常生活の中でも概ね700~900ppmの範囲で推移する良好な空気環境が維持されていました。
「ダクトがないから換気できない」「部屋によって空気がよどむ」という懸念に対して、少なくとも今回測定した住宅では、CO₂濃度の実測データから、そのような大きな偏りは確認されませんでした。
測定②:部屋ごとの換気ムラは発生する?
「ダクトレス第一種換気は、ドアを閉めた個室まできちんと換気できるの?」という疑問を持つ方もいるかもしれません。
ダクトレスで住宅全体を効率よく換気するためには、換気ユニットの配置だけでなく、住宅内の空気が適切に移動できる経路を確保することが重要です。
特に、寝室などの個室では、ドアを閉めた状態でも空気が行き来できるよう、ドア下部にアンダーカット(すき間)を設けるなど、空気の通り道を確保することがポイントになります。
アンダーカットがあることで、ドアを閉めた個室が完全に密閉されることを防ぎ、室内の空気が住宅全体の換気経路に沿って移動できるようになります。
今回の実測では、LDK・2Fホール・2Fスペース1~3の5カ所でCO₂濃度が大きくばらつくことなく、ほぼ同様に推移しました。
この結果からも、ダクトレス第一種換気では、単に換気ユニットを設置するだけでなく、ユニットの配置と、個室を含めた住宅内の空気の通り道を適切に計画することが重要だといえます。
測定③:運転音や不快な風は気になる?
ダクトレスを設置する場合、「運転音が気にならないか」「寝ているときに風を感じないか」といった点も気になるところです。
例えば、弊社日本スティーベルのダクトレス換気システム「VLR-70」には、フクロウの羽根の形状から着想を得た「セレーション技術」を採用しています。羽根の表面に細かなギザギザを設けることで、羽根が生み出す気流の渦を小さくし、空気抵抗や騒音を約30%軽減。静かな環境が求められる寝室でも、快適性に配慮した設計となっています。
また、換気ユニットの設置位置も快適性を左右する重要なポイントです。
特に寝室では、換気ユニットをベッドの頭上など、就寝時に顔や頭部に近い位置へ設置することは避け、できるだけ頭部から離れた位置に配置することをおすすめします。
つまり、ダクトレス第一種換気の快適性は、換気ユニットそのものの性能だけでなく、設置場所や室内の空気の流れまで含めて計画することが重要です。
測定結果からわかるダクトレス第一種換気の実力と注意点
実測データにより、ダクトレス第一種換気システムは計画通りに稼働すれば非常に優れた空気環境を実現できることが証明されました。
ただし、性能を過信せず、特性をよく理解することが大切です。
【メリット】データで証明された換気能力と快適性
ダクトレス式の最大のメリットは、熱交換効率の高さに加え、ダクト(配管)の劣化や汚染リスクが構造上そもそも存在しない点にあります。
熱交換によって外の寒さや暑さを室内の温度に近づけて取り込めるため、エアコンの電気代を節約しながら常に新鮮な空気を取り込めます。
さらに、天井裏に複雑な配管を通さないため、ダクト内部の状態を気にする必要がなく、長期にわたってシンプルな構造を維持できます。
【デメリット】後悔・失敗しないために知るべきことと対策
ダクトレス第一種換気の弱点として、壁にファンが直接埋め込まれているため、
音にひどく敏感な人にとっては就寝時にファンの音が気になってしまう可能性がある点があげられます。
これを防ぐためには、設計段階でベッドの頭元から離れた位置にユニットを配置するよう、レイアウトを工夫することが極めて重要です。
また、寒冷地では寒さによる結露や熱交換素子の凍結などに配慮し、地域の気候条件に適した仕様・凍結対策を備えた機器を選定することが重要です。
そもそも換気システムとは?第一種・第三種換気の違いをおさらい
家全体の快適さをコントロールする換気システムですが、その必要性と種類についてあらためて基本をおさらいしておきましょう。
24時間換気システムの役割と必要性
現代の住宅において24時間換気が法律で義務づけられているのは、シックハウス症候群を引き起こす化学物質の除去や、住む人の呼吸によるCO2濃度の蓄積、そして室内のカビやダニの原因となる湿気を外に逃がすためです。人間は同じ臭いの中に長くいると嗅覚が麻痺し、空気のよどみに自ら気づくのが難しくなります。窓を一時的に開けるだけの自然換気では、近年の高気密な住宅全体の空気を均等に入れ替えることは困難なため、機械の力で計画的に空気を動かし続ける仕組みが必要です。
第一種換気と第三種換気、どちらを選ぶべき?
戸建て住宅で多く採用される換気方式には、第一種換気と第三種換気があります。第一種換気は、空気を取り込む「給気」と室外へ送り出す「排気」の両方をファン(機械)で行う方式です。空気の流れを力強く、一定のルートで制御できるだけでなく、室内の温かさや涼しさを回収して再利用する熱交換機能を搭載できるのが特徴です。一方、第三種換気は排気のみを機械で行い、給気は壁に設けたスリットなどの給気口から自然に外気を取り込みます。第三種は初期費用を抑えられますが、冬には冷たい外気が、夏には温かい外気と湿気がそのまま入ってくるため、冷暖房のエネルギーロスが約30%増えてしまいます。健康的な室温維持と省エネを最重視する場合は第一種換気が適しています。
【徹底比較】第一種換気の「ダクト式」と「ダクトレス式」
第一種換気システムを導入する際、もうひとつの大きな分かれ道となるのが、空気の通り道であるダクトを「通すか」「通さないか」です。
ダクト式:計画換気の王道
ダクト式は、壁や天井裏などに設置した大型の換気本体から、各部屋へダクト配管を家中に張り巡らせて給排気を行う方式です。家全体の換気ルートを計算に基づいてコントロールしやすく、ファンの本体駆動部を人のいない場所に設置できるため、寝室などの静粛性を高められることも特徴です。そのため、広い住宅や複数の居室を一元的に換気したい場合、また、外壁への給排気口の設置をできるだけ減らしたい場合などに適しています。
しかし、ダクトの施工コストが高く、正しい換気設計・施工が行われていない場合、将来的には専門業者による配管内部の清掃が必要になる点がデメリットです。
ダクトレス式:施工性とメンテナンス性が魅力
ダクトレス式は、ダクトを使用しない代わりに、壁面に複数の小さな換気ユニットを分散配置します。ダクトの配管スペースが不要になるため、天井高を高くした開放的なデザインや吹き抜けを設計しやすくなります。施工費や初期導入費用を低く抑えられ、何よりもすべての器具が目の届く壁面にあるため、住まい手自身の手で簡単に清掃や部品交換ができるメンテナンス性の良さが魅力です。
比較一覧表:あなたの家にはどっちが合う?
| 項目 | ダクト式 | ダクトレス式 |
|---|---|---|
| 費用 | 高め | 比較的安価 |
| 空間設計 | ダクトスペースが必要 | 天井裏の配管不要 |
| お手入れ | ダクト内部の清掃が困難 | フィルターを自分で清掃可能 |
| 音環境 | 本体を離して設置でき、静か | 設置場所の選定が重要 |
| 施工性 | ダクト配管が必要 | 配管不要 |
後悔しない!ダクトレス第一種換気システムの選び方とメンテナンス術
ダクトレス第一種換気システムのメリットを最大限に享受し、長期間にわたって良好な空気環境を維持するための選び方とお手入れのコツを紹介します。
家の性能が重要!気密性(C値)との関係
どれほど高性能な換気システムを導入しても、家自体が隙間だらけであれば本来の役割を果たすことはできません。ダクトレス第一種換気が十分に機能するための目安は、建物の気密性能を示すC値が1.0以下であることが望ましいとされています。高気密な住まいがあって初めて、壁面の換気ユニットによる空気の押し引きが機能し、計画的な家全体の空気循環が実現します。
信頼できるメーカー選び3つのポイント
換気システムは、24時間365日稼働し、長期間にわたって使い続ける住宅設備です。そのため、製品の性能だけでなく、導入後も安心して使い続けられるメーカーを選ぶことが重要です。
まず確認したいのが、長期的な部品供給とアフターサポート体制です。長く使っている間には、部品の交換や修理が必要になることもあります。万が一、不具合や故障が発生した際にも、すぐに問い合わせができ、必要なサポートを受けられる体制が整っているメーカーなら、長期的に安心して使用できます。
また、長年の歴史と実績を持つ製造メーカーであることも、メーカー選びの重要なポイントです。換気システムは一度設置したら簡単に買い替えるものではないからこそ、将来を見据えて選ぶことが大切です。
さらに、毎日目にする住宅設備だからこそ、住まいのインテリアに調和するデザイン性も見逃せません。性能やサポートだけでなく、暮らしの中で長く使いたいと思える製品を選ぶことも、快適な住まいづくりにつながります。
日本スティーベルの強み
日本スティーベルは、ドイツ本社102年、日本支社40年の歴史と実績を持つ製造メーカーです。本社ドイツのモットーである「より少ないエネルギーで、いかに効率よく、人々の暮らしを豊かにするか」という考えのもと、目先の省エネ性能や制度への対応だけを追求するのではなく、実際にそこに住む人の快適性や暮らしやすさを大切にした製品開発を続けています。「省エネであること」だけをゴールにせず、その先にある「快適に暮らせること」まで考える。そこに、100年以上にわたり培ってきたスティーベルのものづくりへのこだわりがあります。
性能を維持するメンテナンスの秘訣
どんなに優れた換気システムも、フィルターが目詰まりしてしまえば換気量が著しく低下し、本来の性能を発揮できなくなります。フィルター清掃の推奨サイクルは3ヶ月に一度です。ダクトレス式はお手入れが容易な構造をしているため、フィルターを外して掃除機でホコリを吸い取るだけで、本来の清涼な空気環境と熱交換効率を回復できます。フィルターを綺麗に保つことは、カビや結露の防止のみならず、ファンの電気代削減やアレルギー対策にも直結します。